WINEP

-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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植物鉄吸収機構の説明


Iron Uptake Strategy-I


イネ科以外の植物は根の表皮の細胞膜にIRT1という2価鉄イオン(Fe2+)を細胞内部に取り込むための膜輸送蛋白(トランスポーター)を持っています。これは、IRT1と呼ばれています。また、同じく細胞膜表層に3価鉄還元酵素が酵素の活性中心を根の外側に向けて存在しています。このタンパク質はFROと呼ばれています。畑状態での根圏での鉄イオンはほとんど3価鉄の状態で存在します。根圏での鉄イオンの水中の濃度に関わっている因子は、1)植物根自身がプロトン(H+)をプロトンポンプ(H+ATPase)によって放出することによって根圏のpHを下げて土壌中の不溶態鉄から3価鉄イオンを可溶化する。pHが1下がると103の倍率で3価鉄イオンが水に溶けてきます。2)根圏では微生物が自分自身も鉄を吸収しなければならないので菌体外に鉄溶解生物質(siderophore)を出して土壌中の不溶性の鉄を可溶性のFe3+-siderophoreとして菌の周辺の水に保持しています。3)堆肥や土壌有機物の低分子化合物の緩いキレート力でFe3+キレート化合物を形成しています。植物根はこれらの三価鉄をFRO酵素で二価鉄に還元します。生じたFe2+-キレートは2価鉄イオンの結合力が弱いので、細胞膜のIRT1 に近づくとFe2+がIRT1に引っぺがされて、細胞内に取り込まれます。遊離されたキレートは再度土壌に戻されて鉄の可溶化に使われます。
鉄欠乏条件下では、H+ATPase、IRT1、 FROなどの遺伝子が強く誘導されこれらのタンパク質の機能が飛躍的に高まります。
動画では以上のモデルのダイナミズムを示しています。




Iron Uptake Strategy-II


イネ科植物は根圏にムギネ酸類という有機化合物を分泌しています。この分泌は日周性があり,オオムギなどは日の出直後にいっせいに分泌します。ムギネ酸は3価鉄イオン(Fe3+)のキレーターです。この分泌の膜輸送タンパク質はまだ同定されていません。根圏に分泌されたムギネ酸類は不溶性の鉄粒子や微生物由来のFe3+siderophoreなどから3価鉄イオンを引っぺがしてFe3+-ムギネ酸類とし、その形のまま根の表皮細胞の外側の細胞膜に存在するFe3+-ムギネ酸類膜輸送蛋白(YSL)を通して細胞内に取り込まれます。ムギネ酸合成酵素類の遺伝子やYSLの遺伝子の発現は鉄欠乏条件下で強く誘導されるので、ムギネ酸合成量や、YSLの取り込まれる速度が増強されます。
動画では以上のモデルのダイナミズムを示しています。