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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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ムギネ酸類分泌トランスポーターTOM2は植物体内の金属輸送を担う

Date: 2015-11-30 (Mon)

The Phytosiderophore Efflux Transporter TOM2 Is Involved in Metal Transport in Rice.
Nozoye T, Nagasaka S, Kobayashi T, Sato Y, Uozumi N, Nakanishi H, Nishizawa NK.
J Biol Chem. 2015 Nov 13;290(46):27688-99. doi: 10.1074/jbc.M114.635193. Epub 2015 Oct 2.

ムギネ酸類分泌トランスポーターTOM2は植物体内の金属輸送を担う
  
〜植物の生育に必要な金属輸送に関与するトランスポーターの発見〜

 鉄は全ての生物にとって必須な微量元素である。イネ科植物は、ムギネ酸類を合成して根から分泌することで土壌中の鉄を獲得する。ムギネ酸類は土壌中の難溶性の三価鉄をキレートして、可溶化する。イネ科植物は、生成した鉄―ムギネ酸類錯体を、根の細胞膜に存在する特有のトランスポーターを介して吸収する。ムギネ酸類は、鉄を含む様々な金属の植物体内における移行にも関わっていると考えられている。本研究では、土壌中へのムギネ酸類分泌を担う重要なトランスポーターであるTOM1と相同性の高いTOM2及びTOM3の解析を行った。プロモーターGUS解析により、TOM2は金属の植物体内における移行に関わる組織に発現し、TOM3は植物の限られた部分のみに発現することを見出した。TOM2の発現は登熟中や発芽時の種子などの分裂組織において強く観察された。一方、TOM3の発現は登熟中の種子においてわずかに観察された。RNAiによってTOM2の発現を抑制した形質転換イネは、非形質転換イネ、TOM3RNAi発現抑制イネに比べて、その生育が著しく阻害された。アフリカツメガエルの卵母細胞において、TOM2は放射性同位体14Cでラベルしたデオキシムギネ酸(14C-DMA)の分泌活性を示した。DMAはイネが分泌するムギネ酸類であり、ムギネ酸類の中でもその生合成経路で始めに合成される。タマネギの表皮細胞及びイネの根細胞において、TOM2とGFPの融合タンパク質は細胞膜に局在したことから、TOM2が細胞内から細胞外へとムギネ酸類を分泌するトランスポーターであることが示唆された。本研究により、TOM2はDMAの植物体内における移行に関与し、植物の正常な生育に必要であることが明らかになった。