ジベレリン・シグナルによる組織特異的制御はアラビドプシスの鉄欠乏応答を微調整する
ジベレリン・シグナルによる組織特異的制御はアラビドプシスの鉄欠乏応答を微調整する
Tissue-Specific Regulation of Gibberellin
Signaling Fine-Tunes Arabidopsis
Iron-Deficiency Responses
Michael Wild, Jean-Michel Davie` re, Thomas Regnault, Lali Sakvarelidze-Achard, Esther Carrera,
Isabel Lopez Diaz, Anne Cayrel, Guillaume Dubeaux,Gre´ gory Vert, and Patrick Achard1
Developmental Cell 37, 190–200, April 18, 2016
(要旨)
鉄は多くの生物に必須である。植物は根圏から鉄を獲得し、低鉄栄養条件下では、それに適応するために、異なる生化学的、発生段階的応答をする。
アラビドプシスでは、FITはbasic helix-loop-helix型の転写因子であり、鉄欠乏条件下での根の表皮細胞での鉄吸収に関わる遺伝子群の発現を活性化する。
ここで我々はジベレリン・シグナル DELLA(抑制因子)が鉄欠乏条件に適応的に応答することに大幅に貢献していることを報告する。
鉄の利用性が低下した時にはDELLA群は根の生長点に集積し根の成長を抑制するが、根の分化領域では徐々に表皮細胞から排除されていく。
このようにDELLAが鉄吸収部位から排除されていくことはFITのDELLA依存性阻害を和らげるので、鉄吸収を促進することになる。
これと同様のメカニズムで、根の表皮細胞にあるジベレリンによって分解しない「DELLA変異体のタンパク」は鉄吸収を妨害する。
したがって根におけるDELLAの空間的分布は、鉄の利用性における適応的応答を微調整していることになる。
鉄アリと鉄ナシ培地で育てたアラビドの各種のジベレリン含量
本要旨の内容を表す概念図