WINEP

-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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鉄還元活性を有する根分泌化合物シデレチン(sideretin)について

Date: 2018-12-01 (Sat)

鉄欠乏に応答して植物から分泌される酸化還元能を有する代謝産物の生合成について

Biosynthesis of redox-active metabolites in response to iron deficiency in plants
Jakub Rajniak, Ricardo F. H. Giehl, Evelyn Chang1, Irene Murgia, Nicolaus von Wiren and Elizabeth S. Sattely

Nature Chemical Biology | 442 VOL 14 | MAY 2018 | 442–450 |

鉄は必須元素であるが、特にアルカリ土壌では低い可溶性のために生物利用されにくい。
   
本論文では我々は鉄欠乏処理のアラビドプシスの根から分泌される主要分子として、クマリン化合物フラキセチン(fraxetin)に由来するシデレチン(sideretin)と命名した、以前にはあまり注目されていなかった、酸化還元活性を持つカテコール系代謝物について述べる。
   
我々はフラキセチンとシデレチンに至る代謝経路にかかわる二つの酵素を同定した。
    
フラキセチンとシデレチンの化学的性質と、代謝経路の変異体のバイオアッセイの結果から、これら二つのクマリンはアラビドプシスの鉄栄養にとって極めて重要であることが分かった。
    
さらに、系統樹上アラビドプシスからはかなり離れているeudicot種からもシデレチンは検出された。
   
様々なeudicotの根からの分泌物の代謝産物を網羅的に解析(metabolomics)すると、構造が様々な酸化還元活性を有する分子が、鉄欠乏に応答して生産されることが分かった。
    
我々の結果は、鉄吸収に関して、鉄が二価に還元されてから吸収されるために、(根の細胞膜の三価鉄還元酵素ばかりではなく:筆者注)低分子の還元能を持つ化合物が根から分泌されるという、一般的だがこれまであまり高く評価されてこなかった場合があるのだということを示している。

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