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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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ドイツトウヒのゲノムの中にエピジェネテイックDNA修飾の特異的なセットが存在する

Date: 2021-04-16 (Fri)

質量分析でドイツトウヒのゲノムの中にエピジェネテテイックDNA修飾の特異的なセットが存在することを明らかにした

Mass spectrometry reveals the presence of specifc set of epigenetic DNA modifcations in the Norway spruce genome

IgorA.Yakovlev, DanielGackowski, AbdulkadirAbakir, MarcosViejo, Alexey Ruzov, RyszardOlinski, Marta Starczak, CarlGunnar Fossdal & KonstantinV. Krutovsky

Scientific Reports | (2019) 9:19314 | https://doi.org/10.1038/s41598-019-55826-z

  

(要旨)
5-Methylcytosine (5mC)は後生動物や植物の遺伝子発現制御に関わるepigeneticな一時的な変異である。

Fe(II)/α-ketoglutarate-依存性の dioxygenasesは5mCを5-hydroxymethylcytosine (5hmC), 5-formylcytosine (5fC) および 5-carboxylcytosine (5caC)に酸化することができる。

これらの酸化型5mCは、動物やカビでの脱メチル化中間体として役立ったり、転写制御に貢献したりするのかもしれないのだが、植物ゲノムの中にこれらが存在するかどうかの実験的証拠はこれまであいまいであった。

本稿では 逆相HPLCを高感度質量分析と接続して、針葉樹であるドイツトウヒのDNAの中に5caCではなく, 5hmC と5fCを無視できない感度で検出したので報告する。
 
驚いたことにトオヒのDNA中の5hmC含量はヒト結腸直腸細胞の悪性腫瘍細胞の100分の1以下であったが、- 5fCとチミジン塩基の修飾された5-hydroxymethyluracilは両者ともほぼ同等であった。
 
我々はドイツトウヒの芽における修飾DNA塩基の存在をパーオキシダーゼ結合抗体をtyramideでシグナルを増幅する手法で確認した。
 
われわれの結果は、トウヒのゲノムに非正規DNA塩基が特異的領域に存在することを明らかにしたもので、これらの修飾が植物の発達やホメオスタシスに役割を持つ可能性を意味している。


  
(下図の説明)  
図1.ドイツトウヒの出芽組織1,2と、ヒト直腸結腸の腫瘍細胞(HCT116)と、胚幹細胞(hESCs)の、質量分析による定量。(A) 5-methyl-2′-deoxycytidine, (B)5-(hydroxymethyl)-2′-deoxycytidine,(C)5-formyl-2′-deoxycytidine, (D) 5-carboxy-2′-deoxycytidine, (E) 5-(hydroxymethyl)-2′-deoxyuridine,(F)2′-deoxyuridine and 8-oxo-2′-deoxyguanosine.

  
図2. ヨーロッパトウヒの出芽組織のDNAの修飾された塩基の免疫染色法による検出。
“DAPI”は核の存在を、“Antibody”は修飾塩基の蛍光を、“Merged”は“DAPI” と “Antibody” のシグナルを互いに重ね合わせて見たもの。
抗体シグナルは予想通り核と一致した。5mC and 5fCは最も強い蛍光を示したが、5hmU and 5hmCはより低い蛍光を示し5caCは最も低かった。
顕微鏡の倍率は63倍で、バーの長さは50 µm。



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図1

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図2