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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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師管を経由して移行・移動するRNAの長距離輸送

Date: 2021-05-20 (Thu)

現在mRNAワクチンが話題になっている。直接、体に遺伝子を打ち込むのだからこれは大冒険である。そこで過去の論文の中にmRNAが植物の師管や導管を循環しているという研究があるかどうかを検索したら、ありました。最近の論文は見当たりませんが、植物の感染症関連の論文を、さらに詳しく検索すれば、もっと出てくるのかもしれません。植物へもmRNAワクチンが可能かもしれません。
   
  
師管を経由して移行・移動するRNAの長距離輸送
Long distance transport and movement of RNA through the phloem

Julia Kehr and Anja Buhtz

Journal of Experimental Botany, Vol. 59, No. 1, pp. 85–92, 2008


(要旨)
植物の成長と環境の変化への適応にとって細胞と細胞のコミュニケーションは必須である。
効果的な細胞間ミュニケーション戦略として植物は植物特有のプラズモデスマータを経由する細胞質間連結ネットワークがあるが、これは細胞と細胞の局所的な情報交換に過ぎない。
 
情報の迅速な長距離輸送は、師管の輸送管を通じて可能であるが、それは植物全身にわたっており最も遠隔の組織にも連結しているからである。
代謝産物や植物ホルモンによるコミュニケ―シャンは比較的よく研究されているが、タンパクやRNA類の細胞間移行は、つい最近新しい細胞から細胞への、また長距離輸送のシグナル機構として登場してきた。
 
特に特異的RNA類が細胞の自主性ではなく体全体へ輸送される経路が、例えばウイルスへの防御、gene silencing、発達制御、栄養素の分配などの重要な生理的過程の共役について要の役割を果たしている。
  
この総説は師管の長距離輸送系に含まれているRNA類の輸送のメカニズムとそれらの可能性のある機能ついて最近の知見の要約である。


   
表1。師管の中に見出された内生的mRNAとmiRNA.アルファベット順。
   
図1。全身的に移行するRNAのタイプと、それらが示す主要な作用。
ウイルスのmicroRNAのセンス鎖とmRNAはおそらくribonucleoprotein複合体として移送されるだろうが、siRNAsの移行におけるタンパクの役割の関与に関してはだ解明されていない。師管の中にはmiRNAアンチセンス鎖が生じると思われるが、それらの輸送型や作用に関してこれまでのところ不明である。

RNA結合タンパクは伴細胞(CC)から維管束成分(SE)に結合しているプラスモデスマータ・ユニット(PPUs)の穴を通して入り込むのに必要である。師管の中のすべてのRNAの類は一本鎖RNAであると思われる。

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    表1。師管の中に見出された内生的mRNAとmiRNA.アルファベット順。    

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図1