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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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IRT1輸送体−レセプターによる金属センシングはそれ自身の分解と植物金属栄養を指揮している

Date: 2021-08-12 (Thu)

IRT1輸送体−レセプターによる金属センシングはそれ自身の分解と植物金属栄養を指揮している
Metal Sensing by the IRT1 Transporter-Receptor Orchestrates Its Own Degradation and Plant Metal Nutrition

Guillaume Dubeaux, Julie Neveu, Enric Zelazny, and Gre´ gory Vert
 
Molecular Cell 69, 953–964 March 15, 2018
 
 
(要旨)
 
植物の根は鉄を求めて土壌をまさぐっているが、その濃度は成長が要求する量よりも劇的に少ない。
 
土壌の鉄吸収のために植物は、亜鉛、マンガン、コバルト、カドミウムなどのIRT1という広域元素用輸送体を使っている。
 
洗練された鉄依存性転写制御機構が最適な鉄吸収を確実に保証すべくIRT1の量を厳密にコントロールしている。
本論文では、IRT1が輸送体と受容体(transceptor:トランセプターと称する)として作用しながら、細胞質の過剰な非鉄金属基質を直接知覚して、IRT1それ自身の分解を制御していることを報告する。
 
金属が直接IRT1のヒスチジンリッチ領域に結合するとCIPK23 kinaseの働きでリン酸化が起こり引き続きIDF1 E3 ligaseを呼び寄せやすくなる。
 
IRT1の効率的なendosomeでの振り分けと液胞での分解のためには、CIPK23によって引き起こされたリン酸化とIDF1が媒介するlysine-63 polyubiquitination(ポリユビキチン化)の共同が必要である

このようにして、IRT1は上昇する非鉄金属の濃度を感知し、多種の基質依存的制御を統括して鉄吸収を最適化し、植物を高反応性金属から保護しているのである。
 


図1の説明
 
・土壌の過剰金属はIRT1金属輸送・リセプターによって直接感知される。
  
・CIPK23は金属負荷されたIRT1をリン酸化し、IDF1によってK63 polyUbを誘発する。
 
・K63 polyUbとリン酸化はともにIRT1が液胞に向かうのに必要である。
 
・IRT1が液胞で分解されることによって、反応性の高い金属の集積を制限することになる。

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図1