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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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ヒストンH3リジン4のトリメチル化によって制御されたGRF11遺伝子発現はアラビドプシスの鉄欠乏応答に必須である

Date: 2021-08-20 (Fri)

ヒストンH3リジン4のトリメチル化によって制御されたGRF11遺伝子発現はアラビドプシスの鉄欠乏応答に必須である
  
Histone H3 lysine4 trimethylation-regulated GRF11 expression is essential for the iron-deficiency response in Arabidopsis thaliana
  
Surjit Singh, Sakthivel Kailasam , Jing-Chi Lo and Kuo-Chen Yeh
  
New Phytologist (2021) 230: 244–258 doi: 10.1111/nph.17130
  
(要旨)
  
植物の鉄(Fe)ホメオスタシスは転写因子(TFs) とヒストン修飾を通じたクロマチンの構造改変によってコントロールされている。
  
これまでの論文で鉄欠乏応答の維持にヒストンヒストン修飾が存在することを報告した例は少ない。
  
様々なヒストン修飾に対する光を当てた報文が確かにあるが、鉄欠乏応答における活性化の証拠に関する知見は欠けている。
  
先進的な遺伝学的手法によって、我々は鉄欠乏応答性にとって究極的な対立遺伝子である NON-RESPONSE TO Fe-DEFICIENCY2 (NRF2)を同定した。これは以前には EARLY FLOWERING8 (ELF8)と呼ばれているもので、ヒストン修飾の活性化標識H3 lysine4 trimethylationに関係しているものである。
 
ELF8T404I の一塩基変異であるnrf2-1変異株ではGENERAL REGULATORY FACTOR11 (GRF11)とその下流の鉄吸収経路関連遺伝子の発現が損なわれる。
  
In vivoでのクロマチン免疫沈降法によって、根においてNRF2/ELF8は鉄欠乏応答にとってGRF11遺伝子発現に必須であるが、地上部ではNRF2/ELF8は開化時間の調節にFLOWERING LOCUS C (FLC)遺伝子の発現を制御している。
 
整理すると、 キー因子であるNRF2/ELF8遺伝子は、開花時期の調節と鉄欠乏応答のために必須であることが解明された。
  
  
  
  
下図の説明。
H3K4me3を通してGRF11を標的とすることによって鉄(Fe)吸収に必須の役割を果たすNRF2/ELF8に関する概要のイラスト。
遺伝子はイタリック;タンパクは楕円;点線はH3K4me3活性がGRF11遺伝子を活性化することを示している。矢印は直接の誘導。bHLHはbasic helix–loop–helixのこと。

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