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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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合成ファイトシデロフォアアナログ、proline 2′ deoxymugineic acidは双子葉植物によって効率的に利用される

Date: 2021-09-22 (Wed)

合成ファイトシデロフォアアナログ、proline 2′ deoxymugineic acidは双子葉植物によって効率的に利用される
A synthetic phytosiderophore analog, proline 2′ deoxymugineic acid, is efficiently utilized by dicots

Daisei Ueno; Yuta Ito; Miho Ohnishi; Chikahiro Miyake; Takayuki Sohtome; Motofumi Suzuki

Plant Soil  https://doi.org/10.1007/s11104-021-05152-z
Received: 17 July 2021 / Accepted: 8 September 2021
 
 
(要約)
目的
イネ科植物から分泌されるファイトシデロフォア(PS)は不溶性の鉄(Fe)を可溶化して、生成されたPS-Feは双子葉植物の鉄源にもなりうる。近年合成PSであるproline-2′-deoxymugineic acid (PDMA)がイネ科に対する緩効性微生物分解性鉄系肥料して開発された。我々の実験目的はPDMA-Feが双子葉植物に対しても良好な鉄源であるかどうかを極めるものである。
実験方法
キウリに対するPDMA-Feの利用性をpH 7.0-9.0の石灰質土壌と水耕栽培法で育てて、クロロフィルレベル、PSII活性、鉄吸収量を測定して判定した。根の鉄キレート還元力を鉄
利用性の違いの機構の決定のために測定した。また、鉄の存在状態を知るために鉄欠乏誘導性遺伝子発現を調べた。
結果
PDMA-Fe とEDDHA-Feを石灰質土壌に投与すると鉄欠乏クロロシスが同程度に回復した。しかし地上部の鉄含量はPDMA-Fe処理区の方が高かった。水耕栽培ではPDMA-Fe区がほかのどの区よりもすべてのpHレベルで利用性が高く、この事は高いPSII活性、低い鉄欠乏誘導性遺伝子発現によって確かめられた。アルカリpH条件下ではPDMA-FeはEDTA-Fe や クエン酸-Feよりも還元力活性が強かった。
結論
石灰質土壌や水耕栽培でキュウリの根はPDMA-Feを従来の古典的な合成キレート化合物よりもより効率的に利用する。このPDMA-Feの高い利用性は高い鉄還元性によるものと考えられる。我々の知見はPDMA-Feが双子葉植物にとっても良好な鉄肥料でありうることを示唆している。
   
  
    
図1の説明
石灰質土壌で生育させたキュウリの葉のクロロフィルに対するPDMA-Fe(III)の効果。
鉄欠乏幼植物を鉄キレートの有無で育てた。(a)4日目の地上部の様相 (b)展開葉のクロロフィルレベル(SPAD値)の経時変化。各6連。異なる文字は1%有意差。
 
  
図2の説明
水耕栽培での鉄クロロシス進行に対するPDMA-Fe(III)の効果。
実生を鉄なし条件で1週間育てたのち、0.5M Feキレート剤で中性からアルカリ条件のpH(7.0, 8.0, 9.0)で処理した。(a)4日目の地上部の代表例 (b)主展開葉のクロロフィル含量(SPAD 値)の経時変化。各4連の平均値と標準偏差。
   
  
図3の説明
鉄の状態に対するPDMA-Fe(III)の効果。実生を鉄の有無で4日間育てて0.5M Fe キレート含む水耕液(pH 9.0)に72時間育てた。ferric reduction oxidase 1 (CsFRO1)(a)とiron-regulated transporter 1 (CsIRT1)(b)の遺伝子発現レベルをCit-Fe(III)で育てた根に対する相対値で調べた。各3連の平均値と標準偏差と文字は有意差を示す。
   


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図1

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図2

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図3