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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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アラビドプシスにおいて鉄ホメオスタシスを維持するためにIRON MANはBRUTUSと相互作用する

Date: 2021-10-04 (Mon)

アラビドプシスにおいて鉄ホメオスタシスを維持するためにIRON MANはBRUTUSと相互作用する
IRON MAN interacts with BRUTUS to maintain iron homeostasis in Arabidopsis

Yang Lia, Cheng Kai Lua, Chen Yang Lia, Ri Hua Leia, Meng Na Pua, Jun Hui Zhaoa, Feng Penga, Hua Qian Pinga, Dan Wanga and Gang Lianga

PNAS 2021 Vol. 118 No. 39 e2109063118 https://doi.org/10.1073/pnas.2109063118


(要旨)
小分子ペプチドである IRON MAN(IMA) は鉄の輸送をコントロールするのだが、その鉄シグナリングにおける役割は不明である。

BRUTUS (BTS)は有力な鉄センサーであり、鉄欠乏応答性の正の制御因子である2つのbHLH105 とbHLH115のユビキチン媒介による分解を促進することによって、鉄ホメオスタシスを負に制御する。

今回我々はIMAペプチドがBTSと相互作用することを見出したので報告する。
IMAペプチドのC-末端部分はBTSのC末端と相互作用するドメイン(BID)を有している。

恒常的にIMA 遺伝子を発現しているアラビドプシス植物は bts-2変異株 の表現型模写である(phenocopy:生物が外部からの環境要因の影響によって、遺伝子には突然変異のような変化を起こさずに、突然変異と同じような表現型を表すこと従ってこのような表現型模写の形質は子孫に遺伝しない:訳者注)。

さらに、IMAペプチドはBTSによってユビキチン化されて分解される。

bHLH105 とbHLH115も同時にBIDを共有している。このことはこれらのタンパクがBTSと相互作用していることの説明になる。

IMAペプチドはBTSと相互作用するときにbHLH105/bHLH115と競合するので、BTSによるこれらの転写因子の分解を阻害することになる。

遺伝学的分析によればbHLH105/bHLH115とIMA3は相加的な役割を有して、BTSの下流に作用する。

さらに、鉄欠乏条件下ではBTS と IMA3の転写はbHLH105 と bHLH115によって直接的に活性化される。

我々の発見は鉄ホメオスタシスの制御を理解する上において概念的な体系を提供するものである:すなわちIMAペプチドはBTSを隔離することによってbHLH105/bHLH115を分解から防御することによって、鉄欠乏応答の活性化を行っている。


図1 鉄ホメオスタシスにおけるIMAsの作業モデル
有力な鉄センサーであるBTSは鉄の存在下で不安定である。
  bHLH105 と bHLH115は2つの主要な鉄ホメオスタシスの制御因子である。それらはBTS,IMA3,またPYE や bHLH Ibを含むその他の鉄欠乏応答性遺伝子などを直接活性化する。
BTSはIMAs や bHLH105/115をユビキチン化して分解する。
  鉄十分条件下では、ほとんどのbHLH105/115はBTSによって分解されるので、鉄欠乏応答性遺伝子の転写は限られている。
  一方、鉄欠乏条件下では、BTSは誘導されているのだが、大部分のIMAsは合成されて、bHLH105/115 と BTSの相互作用が競合的に阻害するので、それらがBTSによって分解されるのを緩和している。
   最後に、bHLH105 とbHLH115は鉄欠乏応答性遺伝子群の発現を活性化する。
   オレンジ色の矢印幅は相対的なタンパク含量を意味している。
   クエスチョンマークは未知の転写複合体で、bHLH121, bHLH IVc類や他の転写因子で構成されている。
   26 Sは26 Sプロテアアゾーム複合体の意味。
   点線は in vitro実験 で確認されたわけではない。

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図1