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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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組織特異的プロモーターによる ZmYS1 および OsTOM1 の発現を利用した新規なイネ鉄バイオフォーティフィケーションアプローチ

Date: 2022-06-09 (Thu)

以下は受理されているが未発刊論文である。日本人が first author になっているので読んでみた。増田寛志君たちの研究の流れの一環であるので、別にスイスで研究する必要もないものだと思うが、ポスドクで外地で研究したかったのかもしれない。OsTOM1(野添朋子さんが発見したムギネ酸排出のトランスポーター)を遺伝子導入に用いているところが新しい観点かと思う。いろんな遺伝子の組み合わせで白米で10ppm以上の鉄含量まで高めたのは、素晴らしい成果だ。

   

組織特異的プロモーターによる ZmYS1 および OsTOM1 の発現を利用した新規なイネ鉄バイオフォーティフィケーションアプローチ
 
川上雄太1、Wilhelm Gruissem1,2,、Navreet K. Bhullar1
1 スイス連邦工科大学チューリッヒ校生物学部植物バイオテクノロジー学科、Universitätstrasse 2, 8092 Zurich, Switzerland
2 国立中興大学バイオテクノロジーセンター 〒40227 台中市興大路 145 号、台湾
 
(要旨)
イネの鉄分濃度を本質的に改善することは、イネ鉄分バイオ フォーティフィケーションと呼ばれ、人間の鉄欠乏症の対策として有望視されている。
本研究では、2 つの新しいイネ鉄バイオ フォーティフィケーションのアプローチを報告する。
最初のアプローチ(Y アプローチ)は、HEAVY METAL ATPASE 2 プロモーターによって制御されたトウモロコシ YELLOW STRIPE 1 の発現を伴うものであった。
Y アプローチでは、非遺伝子組換え系統と比較して、磨砕粒の鉄濃度が最大 4.8 倍に増加した。
第二のアプローチ(Tアプローチ)は、FERRIC REDUCTASE DEFECTIVE LIKE 1 プロモーターによって制御されたイネのTRANSPORTER OF MUGINEIC ACID 1を発現させるものであった。
T 法は精白穀物中の鉄濃度を最大 3.2 倍まで増加させた。
Y と T を組み合わせた場合(YT 法)には、相乗的な研磨粒の Fe 濃度の増加は見られなかった。
しかし、YTアプローチと胚乳特異的なフェリチンの発現(YTFアプローチ)、あるいはYTFアプローチと 構成的なニコチアナミン・シンセターゼの発現(YTFNアプローチ)を組み合わせた場合、精白粒鉄濃度は NT系統に比べてさらに5.1〜9.3倍増加した。Y、T、YTおよびYTFN系統の1株当たりの総穀粒重はNT系統と同程度であったが、ほとんどのYTF系統で有意に減少した。


(図1、図2の一部、の説明)

図 1 本研究で使用したベクターの模式図。

p35S:35Sプロモーター;PMI:大腸菌PHOSPHOMANNOSEISOMERASE CDS;t35S:35Sターミネーター;pHMA2:イネHEAVY METAL ATPASE 2プロモーター;YS1:トウモロコシYELLOW-STRIPE 1 CDS;tHSP:アラビドプスHEAT SCHOCK PROTETIN 18. 2ターミネーター;pFRDL1:イネ FERRIC REDUCTASE DEFECTIVE LIKE 1プロモーター;TOM1:イネ TRANSPORTER OF MUGENIC ACID 1 CDS;pGlob:イネ GLOBULIN 1プロモーター;FER H-1: 大豆 FERRITIN H-1 CDS; tOsGluB1: イネ GLUTELIN B1 terminator; pUbq1: トウモロコシ UBIQUITIN 1 promoter; NAS1: 大麦 NICOTIANAMINE SYNTHASE 1 CDS; LB: Left border; RB: Right border.
 

図 2 グラスハウス 1 の T3 穀物中の精選された Fe と Zn 濃度。

グガラス室における研磨粒のFe(A)とZn(B)濃度。遺伝子組換え系統の磨砕粒の金属濃度は、多重比較のために Benjamini-Hochberg p 値調整した Welch の t-検定によって NT 系統のものと比較された。ns: 有意差なし, *: p値 < 0.05, **: p値 < 0.01. n = 4, ただし Y99, T81, YTF104, YTF25, YTF86 は n = 3. 各ラインの平均研磨粒金属濃度間のピアソン相関行列(C)。行列の左下半分の数字は、対応する金属元素間のR値。統計的に有意な(p-value < 0.05) 相関関係のみが示されている。

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図1、図2