WINEP

-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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鉄欠乏症のネットワークに光を当てる

Date: 2022-08-08 (Mon)



以下もISINIPの講演要旨からです。



鉄欠乏症のネットワークに光を当てる

メアリー・ルー・ゲリノ
ダートマス大学バイオサイエンス学部、ハノーバー、NH 03755
電子メール : Guerinot@Dartmouth.edu

鉄は植物にとって必須栄養素であるが、過剰な鉄は毒性がある。そこで、15以上の転写因子と3つのE3リガーゼを含む制御カスケードが多くの遺伝子の発現を制御し、鉄の取り込み、分布、利用を増加させている。このような知見を活用することで、現在では限界とされている土壌でよりよく生育する植物や、現在耕作されている土壌で作物のバイオマス量を増加させる植物を設計することができるかもしれない。さらに、多くの人が食事から鉄分を摂取していることから、鉄分をより効率的に摂取できる植物は、人々の健康増進に役立つと考えられる。
植物の根における鉄欠乏反応とは対照的に、葉における鉄欠乏反応の制御については、あまり知られていない。鉄の90%は葉緑体に存在することから、鉄の欠乏は光合成に多くの悪影響を及ぼすことは明らかです。私たちは、鉄を制御するbHLH転写因子ILR3とPYEが、鉄欠乏時の光保護に必要であることを発見しました。これらの転写因子の制御下で葉緑体の形態が変化することで、有害な活性酸素の産生を防ぎ、光化学系IIの酸化的損傷の修復を可能にする。現在、ILR3およびPYEの候補となる標的遺伝子の同定を進めている。