WINEP

-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
転載希望時は連絡先まで

日光戦場ケ原の土はなぜ赤い?

Date: 2008-06-01 (Sun)

日光戦場ケ原の土はなぜ赤い?

日光の戦場ケ原は今は枯れ草で覆われて 強者(つわもの)どもが夢のあと のようである。その間を50センチ幅の小川がかすかに流れている。しかしその川の底は異様に赤い土である。これはなぜだろう? 川の脇の土の断面は10センチメートルぐらいは湿原の植生(ホザキシモツケ、ワタスゲ、サギスゲ、ヤチ坊主、バイケイソウ、ハナショウブ、イブキトラノオ、ハクサンフウロなど)によって形成された泥炭層で黒い。しかしその下層は徐々に赤くなっているようである。往き用と帰り用に設営されている木板の通路を湯川に沿って歩いていると、川岸の断面がむき出しになっているところがある。よく見るとそこも、上層20センチぐらいは腐食層で草や灌木が立っている。ミズナラの灌木が多く、根が浅いためか時々倒れている。その腐食層の下は赤土である。つまり男体山が何回か噴火したときに流れ出た火砕流が急激に酸化して酸化鉄の状態で固化したものと思われる。永年の間にその上に泥炭層が出来たわけであるが、戦場ケ原の中に出来た小川は泥炭層の底がえぐられて、赤い色の酸化鉄の層が露出している。戦場ケ原はいつも地面には水がたまって滞っているので泥炭の下層は還元層が発達して土壌の不溶態の酸化鉄イオンが還元されて2価鉄イオンが溶け出していてそれが小川に流れ込むのだが、空気に触れてすぐに沈殿してその酸化第2鉄が川底を赤く染めているのだろう。小川の流れが止まって空気とふれている停滞水の上にはうっすらと炭酸鉄の被膜が浮いていることからも、停滞水には2価鉄が大量に溶けていることがわかる。このような炭酸鉄被膜の現象は有機物を多用した還元が進みすぎた水田の田面水によく見られる現象である。

photo

photo

photo